意匠性が高くお家をおしゃれに演出できるサイディングボード。
この記事は、サイディングの塗り替えに必要な下処理と塗装方法についてのお話です。
相模ライフ株式会社 一級塗装技能士:藤原
そもそもサイディングボードって何?
時代の変化と共に現在ではモルタル壁ではなく、サイディングボードが一般的に使用される外壁材となりました。
モルタル壁とはその名の通りモルタルで作られた壁で、基本的には表面にパターンがつけられています。
サイディングボードとは現在広く普及し、意匠性に優れ多種多様なデザインの物が存在します。
デザイン性に優れオシャレなイメージを演出できるサイディングボードですが、メンテナンスを怠ってしまうと著しく劣化してしまうのも事実です。
タイル風の外壁模様なため塗り替えが必要無いと思ってしまっている方も稀におられますが、窯業系(セメント系)のサイディングボードの場合は正しい周期で、正しい施工方法でメンテナンスが必要となってきます。
代表的なサイディングの種類
サイディングボードには大きく三種類に分けることが出来ます。
まずはその三種類にはどのような物があるのかを見ていきましょう。
窯業系サイディングボード
窯業系サイディングとは繊維質原料とセメント、混和材から造られています。
繊維質原料で強度を持たせ、混和剤で軽量化を図ることで外壁材に適した重さと軽さを実現しています。
それらのボードを構成する原材料を混ぜ合わせ形成し、高圧の窯で熱を加えることによってサイディングボードは作られていきます。
金属系サイディングボード
金属を加工し、塗装処理がなされた外壁材です。
トタン素材のサイディングでは断熱性の低さ、錆びが発生してしまうという欠点がありましたが、昨今の金属サイディングではガルバリウム鋼板が使用され、塗装処理にはフッ素が使用されていることから、新築時より20年メンテナンスが要らないというような外壁材も発売されています。
木質系サイディングボード
メンテナンスの大変さからあまり見ることのなくなった木質系サイディングです。
ノンロットなどの浸透系の撥水塗料での塗り替えが必要とされますが、表面に塗膜が張られ保護される塗料ではないため、メンテナンスの間隔はとても短くなります。
木目調の窯業系サイディングなども普及しているため、よほどのこだわりがない限りはあまりオススメは出来ない外壁材です。
サイデイングボードの塗り替え時期は?
まずサイディングボードはモルタル壁に比べ、少々劣化が早いという事を念頭に置いておかなければなりません。
大きく塗り替え時期の年数が変わるわけではありませんが、表面の塗膜が防水・保護機能を失ってからの劣化が著しいです。
美観のためだけでなく、サイディングボードの寿命を延ばすため、適切なタイミングはいつなのかを確認していきましょう。
新築から10年経ったら
モルタル壁と同じように、築10年が塗り替えの目安だと言われています。
サイディングは生産時に塗装処理をして出荷されますが、その塗料の耐用年数は10年前後であり、その頃から劣化が進んでいくためです。
しかし昨今のサイディングボードの中には、光触媒処理がなされていたりと安易に塗り替えを行う事が出来ないのも事実です。
そのような処理をされたサイディングボードでは特別な下地処理が必要となるため、しっかりと見極めができる業者に工事を依頼しないと密着不良による塗膜の剥離などの不具合が発生してしまいます。
また一般的に使用されるシリコン塗料の耐用年数も約10年程ですので、一度塗装をしている場合も10年を過ぎたあたりから劣化が見られ始めることが多いです。
劣化症状による判断
前回の使用塗料がわからなかったり、コーティングがなされているサイディングボードなのかの判断がつかない場合は劣化状況から判断しましょう。
症状 | 重症度 | 詳細 |
---|---|---|
変色・退色 | ★ | 初期の経年劣化です。この症状が現れてから劣化が進行していきますが、この段階では急いで工事をする必要はありません。 |
汚れ | ★ | 砂埃や排気ガスで外壁が汚れている状態です。コケやカビの原因になることもありますが、急を要することはありません。 |
チョーキング | ★★ | 塗料としての役目を果たし、撥水・保護機能が失われた状態です。モルタル壁等と違い、水分に弱い性質を持つので早めの塗り替えを検討すべきです。 |
藻・カビ・コケ | ★★ | 塗膜にコケやカビが繁殖しこびりついてしまっている状態。 外壁の欠損や内部の外壁材内部の劣化にも繋がりますので早めのメンテナンスが必要です。 |
ヒビ割れ | ★★★~★★★★ | 地震や侵入した雨水によってヒビが発生してしまった状態。 ヒビの太さによって重症度は変わりますが、モルタル壁と違い、基本的にサイディングボードはひび割れていい材質ではないため、早急な処置が必要です。 |
膨れ | ★★★★ | 雨水が日常的に侵入してしまっている状態。外壁の劣化というよりかは雨漏りの補修を早急に行う必要がある場合がほとんど。 |
剥がれ | ★★★★★ | 膨れの症状が進行し塗膜の剥離、欠落が起きてしまった状態。 塗装工事での補修が出来ないわけではないが、部分的なサイディングの張替えや、全体の増し張りを検討すべき状態。 |
コーキングの劣化 | ★★★★ | サイディング目地のコーキングが劣化し、隙間を埋めるという役目を果たせていない状態。 ひび割れているくらいならまだしも、欠落してしまっているような場合は早急に補修が必要。 |
コーキング(シーリング)とは、サイディングのボードとボードの隙間を埋めるゴム質の充填剤のことで、雨水の侵入を防いだり、ボードの切り口の保護にも一役買っている部分。
シーリングの劣化は外壁材の劣化に大きく影響するため、見逃すことは出来ません。
窯業系サイディングボードの三つの塗装方法
塗り潰し塗装
施工方法はモルタル壁と同様の三回塗りで、材料の選択を間違え無ければ特に問題が発生する事もありません。
透湿性や密着力の違いで、膨れや剥がれといった不具合が発生してしまうからです。
また下記の工法にも同じ事ですが、サイディング表面のコーティングの有無でも使用する材料が変わるため、その見極めも重要になってきます。
クリアー塗装
サイディング本来の風合いや柄を残したい時はクリアー塗装を施します。
適切なタイミングで施工する事で新築時のイメージを保ち続ける事が可能で、雨や紫外線等からサイディングを保護します。
しかしクリアー塗装を行うには条件があります。
欠けや剥がれなどで色が飛んでいない事、ボードが反り返っていない事、大きなヒビや割れが無い事などサイディングボードが著しく劣化していない事が条件となります。
多少の補修は可能ですが透明な塗料を塗布するので、傷やヒビなどを隠蔽する事が出来ず仕上がりに影響が出てしまうためです。
ですが、激しく劣化は進んでしまったがどうしてもサイディングを一色で塗り潰すのはイヤだ、という方には最後の手段があります。
目地塗り分け塗装
その名の通り目地と表面部分を手作業で塗り分けていく工法です。
目地の色で全てを塗りつぶしてから極短毛のローラーで斜めに塗装していく事によって塗り分ける事が可能です。
文字にすると簡単そうに聞こえますが、綺麗に仕上げるとなると中々神経を使うのがこのやり方です。
通常の塗装では3回塗りが基本ですがこの工法の場合は4回塗りが必要になります。
下塗り→目地色での塗り潰し→表面色の塗装
となると目地部分が一回塗りになってしまうため耐用年数が落ちてしまうからです。
なので正しくは
下塗り→目地色での塗り潰し→目地色の2回目→表面色の塗装
となります。
もしくは仕上げにクリアー塗装を施すというやり方もありますが、どちらにせよ工程の増加や塗り分け作業に手間が掛かってしまうため、通常の塗装よりも費用が高くなってしまいます。
サイディング本来の意匠性を保ちたい場合は、早いタイミングでのクリヤー塗装をお勧めします。(新築時より10年未満が目安です)
サイディングの劣化スピードにはボードの厚みや湿度、陽当たりや換気状態など様々な要因で大きくバラつく事があります。
ボードに浮きがみられる場合や、破損している場合には塗装前に処理が必要です。
一般的な目安である10年を待たずに激しく劣化が進んでしまっている場合がありますので、時折外壁の状態に目を向けてみる事が大切です。
金属系サイディングボードの塗装方法
こちらのサイディングは金属の種類によって使用する材料が変わってきます。
一般的な材質のトタン系のサイディングなら錆止め塗料を下塗りに用いて、上塗りにはシリコンを使うという工法で問題ありませんがガルバリウム鋼板ではそうはいきません。
ガルバリウム鋼板のサイディングにはフッ素塗装がなされている事がほとんどです。
ここで問題になるのがそのフッ素塗膜です。
通常の塗り替えでも問題になるのですが、フッ素樹脂の高い防汚性が裏目に出ることがあり、密着不良による塗膜の剥離が起きることがあります。
そのため、フッ素塗装がなされている場合には通常の塗装工程に加え、一つ下地処理の工程が増えます。
塗り替えを検討する場合には材質や塗膜の判別がつく業者に依頼するのがいいでしょう。
木質系サイディングボードの塗装方法
メンテナンスと維持がとても大変な木質系サイディングです。
塗装の方法としては『塗りつぶし』と木目を活かす『ステイン』があるのですが、どちらも耐久性は低くなる傾向にあります。
ステイン仕上げの場合には、塗装前にあく抜きと呼ばれる薬品を用いた汚れ抜き作業が必要になります。
新築時に木目の外壁にしたいとお考えの場合は、窯業系サイディングの木目ボードを使用するのがベストかと思います。
サイディングの塗装にかかる費用はどれくらい?
サイディングのお家はコーキングが無い分モルタル壁のお家より費用が安くなる傾向があります。
おおまかな塗装費用を表で確認してみましょう。
坪数(延坪) | 塗装面積 | 外壁塗装+コーキング打ち替え |
---|---|---|
10坪 | 40㎡ | 20~40万円 |
20坪 | 80㎡ | 40~70万円 |
30坪 | 120㎡ | 60~100万円 |
40坪 | 160㎡ | 80~130万円 |
50坪 | 200㎡ | 100~160万円 |
60坪 | 238㎡ | 120~200万円 |
70坪 | 280㎡ | 140~230万円 |
100坪 | 400㎡ | 200~320万円 |
どんな塗料を選べばいいの?
特にこだわりがないのであればシリコン塗料が価格、耐久性ともにバランスが良いかと思います。
コストパフォーマンスに優れ、次回の塗り替え時にも特別な下地処理を必要としないため非常に使いやすい塗料と言えます。
まとめ
劣化が進んでしまったからと言って、絶対に塗りつぶしの塗装をしなければならないという訳ではありませんでした。
保護の観点も大事ですが、美観も大事です。
納得のいく工事をしてくれる業者をじっくりと探しましょう。
サイディングボードの塗り替えでは、モルタル壁に比べ知っておきたい事柄が多くありました。
決して安くはない塗装工事で失敗しないためにも、まずはお家の状態を把握し、最適な工事プランじっくりと練っていきましょう。