建物の寿命を長くするためには定期的なメンテナンスと正しい知識が必要不可欠です。
リフォームとはお金のかかるものなのでつい金額で判断してしまったり放置してしまいたくなりますが、それはあまり正しいとは言えません。
この記事ではメンテナンスの大切さについて解説したいと思います。
一級建築塗装技能士、神奈川県職業訓練指導員:藤原
塗装工事
- まず塗装工事の目的は大きく分けて3つあります。
建物を美しく保つという美観のため、もう一つは雨、風、紫外線から守るという耐候性の延長のため、そして最後に機能性の付加です。
一般的に塗装工事は10年毎に必要と言われますが何故なのでしょうか。
それは塗料の耐用年数によるものです。
塗料開発技術が進歩しシリコン樹脂以上の塗料が一般的になった今、20年の耐用年数を持つ塗料も存在しますが昔はアクリルやアルキド樹脂が主流でした。
それらの塗料は耐用年数が5年程度と短かったため工事を先延ばしにしても10年程度が限界だったわけです。本来塗装工事は耐用年数と同等の経過年数で工事を行うことが美観を保つという面でも、建物の寿命を延ばすという面でもとても重要になってきます。
というような事を謳って売り込む業者がいますが一般的な塗装工事にそのような効果はありません。
何故なら塗膜はおよそ、コピー用紙1枚分の厚みしかないからです。
しかしそんな夢の様な塗料も今は存在しているんですね。↓
吹き付け塗装なだけに今の時代では戸建住宅の外壁の主流になることはないかも知れませんが、ベランダ防水の施工方法の一つとして世に出回って行く日は近いような気がします。
ベランダ床はウレタン防水・FRP防水共にヒビや剥がれなどが起きやすい部分ですのでこの様な塗料が本当に施工でき、なおかつメンテナンスも可能ならとても画期的な発明だと思います。施工後の経過を見たわけではないので今この塗料を使うのは躊躇してしまいますがline-xについてはこれからも注目していきたいと思っています。
- さて話は戻りますが塗膜というのは雨風はもちろん紫外線からのバリアにもなっています。
人が日焼けしてヒリヒリする様に、紫外線は建物を痛めつけてしまいます。塗膜が代わりに痛んでくれるお陰で素地が劣化から守られるという事なんですね。
それに加え弾性のある塗料ですとヒビ埋め、ある程度のヒビ割れ防止にもなります。
サイディング壁のヒビは深刻な場合が多いですが、モルタル自体ヒビが入りやすい材質ですのでモルタル壁では多少のヒビでは雨漏り等はしませんし、そこまで神経質になることはありません。
しかしヒビがあるのとないのでは美観の問題でも無い方が良いですよね。
そして何よりこわい事ですが、専門の方でないと放置可能なヒビと緊急を要するヒビとの見分けが付かないと思います。
ヒビの太さと深さ、場所で判断する事が出来ますが人間の体調と同じ様に重症化してしまったらより治療に時間もコストとかかってしまうので、気になるところがあればまずプロに相談する事をお勧めします。
しかしながら塗装工事はお金がかかるのも事実です。そこでDIYに挑戦する方に向けて、現役の職人が重要視するポイントや作業のコツなども公開していきますので参考になれば幸いです。
他にも断熱、遮熱効果を付加したり雨と光の反応で汚れを落とす機能を付加させる事も出来ますので興味のある方は覗いてみてください。
[sitecard subtitle=あわせて読みたい url=https://www.sagami-life.com/2020/02/01/材料の色々/]
塗膜が劣化しチョーキング(白亜化)を起こしている状態。
塗装面に剥離などが見受けられなくても紫外線や雨風により塗膜は粉体となり剥がれ落ちています。
この状態では撥水効果も期待できないので、汚れが目立ちコケがつきやすく加速度的に劣化が進んでいきます。
塗装の劣化とは年数ごとに進みが早くなり5年経過時点では良好に保たれていたとしても、10年経過時点でかなり劣化が進んでいることは珍しくありません。
緊急度★★☆
劣化が激しく進んだコーキング。
サイディングボードの隙間から水が浸入することを防ぐ役割をしています。このまま放置するとサイディングボードの断面から水が染み込んでいき割れや膨れ、欠損など重大な不具合に繋がります。
緊急度★★★
屋根工事
- あまり目に入らない部分なので気にならないかも知れませんがお家のなかで一番大切なのがこの屋根部分です。
屋根工事には塗装、葺き替え、カバーといったやり方があります。塗装工事→カバー工事→葺き替え工事 といった順に費用が高くなってきます。
葺き替え工事はその名の通り既存の屋根を解体したのちに屋根を葺きます。
ではカバー工事とは一体なんなのかという事ですが、既存の屋根を解体せずその上に新たな屋根を被せる工法の事です。
カバー工法は既存屋根材を残したまま施工するため、屋根材の撤去や廃材処分などの費用がかかりません。
そのため、屋根を一式交換する葺き替えよりも、費用を抑えられるという事になります。
屋根が二重構造になるので防音性や防水性も高まるというメリットも存在します。
屋根を新たに作るといっても劣化が進み、下地や骨組みまで影響が出ている場合はカバー工法は使用できず葺き替え工事となり、高額な費用がかかってしまうので定期的なメンテナンスは重要になってきます。
築年数10年目程度の時点では塗装工事で十分な場合が大多数を占めますが、それでも貫板の交換はしておいた方が良いかと思います。貫板とは棟板金の土台と言える様な部分の事ですが材質は一般的に木となっています。
雨、風、熱と環境の厳しい屋根の上ですから貫板の劣化は相当に進んでいます。台風などの強風で棟板金が外れたり吹き飛ばされる事も珍しくありません。
築年数20年目程度でも屋根材自体は塗装が行える状態である事が多いです。
しかし屋根材の下にある防水シート(以下ルーフィング)は別です。一般に使用されているルーフィングの耐用年数は15年程度とされており二回目の塗り替え時期には既に役目を終えてしまっているのです。
なので見た目だけでなく内部の事も調査が必要になってくる時期であると共に、先々の事を見据えたリフォームが必要になってくるという事ですね。
実際に台風で外れた棟板金。
下からでは見る事ができない屋根は不具合の発見を遅くしてしまいます。
一見なんて事無いように見えても釘が抜けていたり貫板が痛んでいると、写真ように吹き飛ばされてしまうことも多々あります。
このような事例では火災保険が適用されます。
実費で修理をする必要はありませんので保険会社さんや工事会社さんに聞いてみると良いでしょう。
緊急度★★★★★★★★★★★★★★★★★★
瓦自体の耐用年数は40年程度と言われています。
しかしその丈夫に見える瓦の下はこの様にとことん劣化が進んでいます。
防水シートに至っては所々に破れがあり意味をなしてないといっても過言ではありません。
瓦を引っかける部分である桟木も腐食が進んでおり瓦のずれ、落下の原因になっています。
緊急度★★★
屋根材にも様々な種類がありそれぞれに耐用年数の違いや価格、デザインの違いが存在します。
塗装工事同様お金のかかる工事です。
雨漏りなど緊急を要する不具合が発生してからお金の工面をするのはなかなかに大変だと思いますが、定期的にメンテナンス・点検を行い、いつ頃にどれ位の費用が掛かるのかを把握しておく事で無理のない計画的なマイホーム維持が可能となります。
建物の修復と言った意味だけでなく、そう言った意味で[メンテナンス]と言うのは非常に大切なものになってきます。