塗装工事をお考え際に難しいのが塗料の選び方ですよね。
この記事ではお家の方も塗料についての知識を身に着けることのメリット、必要性を解説していきます。
相模ライフ株式会社 一級塗装技能士:藤原

外壁塗装の知識を深める意味

塗料ごとにコストとデザイン性はもちろん、機能性にも大きな違いがあります。

機能性が高まるにつれ当然価格も高まっていきますが、材料についての知識を深める事で工事のコストパフォーマンスをより高いものにすることが出来ます。
悪質な業者を除き、全ての業者は最高なプランをお客様に提案したいと望んでいます。しかし新たな製品が次々に生まれてくるこの時代で、知識が追い付いていない業者が数多くいることも事実です。

例に挙げると、日本ペイントのピュアライドUVプロテクトクリヤーの施工方法がそうです。

この塗料の施工時には一般的にコーキングの打ち替えも行いますが、その時に外壁塗装の前にコーキングの打ち替えをする業者が半数以上存在します。
しかしクリヤー塗料は硬化後の状態が比較的硬いため下にある柔らかなコーキングに追従する事が出来ず表面がヒビ割れて来て、最終的には蛇の皮のように剥がれかなりみすぼらしい状態になってしまいます。

そのためクリヤー塗装時にはコーキングは最後に行うのが正しい施工方法です。

この事実についてはメーカーによる注意書きにもハッキリと明記されているにも関わらず、何故このような事が起きてしまうのでしょうか?

答えは業者の勉強不足と言わざるを得ません。

確かにコーキングの打ち替えを行なってから外壁塗装に入るのが基本的な流れになりますが、それはいつどんな時も適用される訳ではありません。

と、このような事例も少なくありませんので盲目的に業者を信頼するのではなく、自分自身でも知識を身につける事が大切になってきます。

業者が100パーセント正しいとは限らない

 

塗料の種類

塗料には大きく分けて水性と油性があります。

本来の溶剤という言葉を考えると少し変ですが、建築業の中においては油性塗料が溶剤と呼ばれる事もあります。

今までは水性塗料よりも油性塗料の方が耐久性が良いと言われていましたが、現在では技術の進歩もありほとんど差は無いと思います。
被塗装物の材質によって使い分けが必要ですが、臭いなどを考慮すると出来る限り水性塗料を使用する方が工事期間中のストレスを減らせると思います。
それぞれの光沢についてもほとんど差はありませんが少し油性の方が強めに出る傾向があります。

油性塗料は油性調合ペイントと油性合成樹脂塗料という分け方が出来ます。

耐候性も低く作業性も悪いため油性調合ペイントは現代ではほぼ使用されておらず、もしこの塗料を提案された場合は検討するまでもなく変更してもらいましょう。

主流である合成樹脂塗料ですが、これは使用してる樹脂によって耐久性が異なります。一般的に普及しているものの中からグレードの高い順からフッ素→シリコン→ウレタン→アクリルとなっています。

ただこれはあくまで耐候性についての順位づけであり、それぞれに長所と短所があるのでグレードが高いから良いものだと思い込むのは工事の失敗に繋がります。

 

樹脂ごとの特徴と無機塗料

塗料の種類 耐用年数 施工単価 特徴
アクリル塗料 4~7年 1,200~1,800円/㎡ プラモデルや絵の具などに使われ、比較的色が鮮やかな塗料です。紫外線に弱く、耐用年数が短いため、昨今の外壁塗装で使用されることはほとんどありません。
ウレタン塗料 7〜10年 1,800~2,500円/㎡ 密着性と柔軟性に優れ、様々な素材に適応する塗料です。少し前の主流塗料ですが、現在の塗料に比べ耐久性に劣るため、外壁に使用されることは少なくなりました。
シリコン塗料 12〜15年 2,000~3,500円/㎡ 現在の主流塗料と言えます。耐久性と価格のバランスが良いため、コストパフォーマンスに最も優れています。ウレタン塗料に比べると弾性と密着性に劣ります。
フッ素塗料 15〜20年 3,000~5,000円/㎡ 近年注目を集めているハイグレード塗料です。フライパンに使用されるように、フッ素の防汚性を活かした高耐久がウリですが、塗膜が固くひび割れやすいなどデメリットもあります。
無機塗料 18~30年 4,000~6,500円/㎡ 石やガラスなどの無機物が劣化しないという点に着目し、その性質を応用した塗料です。塗膜が固く割れやすい、価格が高いなどのデメリットはありますが、今後の進化に期待が寄せられる塗料です。

このようにグレードの高い塗料にも弱点があり、反対に比較的低いグレードの低い塗料にも長所があります。
それぞれの特性を理解し正しい部位に使用する事でコストを抑え、なおかつクオリティの高い工事を行うことが出来るのです。

アクリル塗料

アクリル塗料の長所はなんといっても価格が安いところです。しかし耐候性が低く塗り替えスパンが短いためトータルで考えるとむしろコストがかかってしまうのでメリットとはいえないでしょう。
しかし防カビ性に優れている塗料もあるので紫外線の当たらない天井や室内塗装ではアクリル塗料が広く使用されています。

また近年ではピュアアクリル塗料というアクリル樹脂本来の性能を最大限に引き出し、シリコンにも負けない性能を持つという塗料も登場していますがまだ信頼が薄く、コストも低くないためあえてこれを選ぶ必要はないでしょう。

ウレタン塗料

ウレタン塗料の長所としては可塑性(柔軟性)と密着性が高いことや光沢が強いこと、コストが低く抑えられるという事が挙げられます。
雨樋などの塩ビ素材や金属部分に一般的に使われます。

しかしシリコンに比べ紫外線の影響を受けやすいため外壁や屋根への施工はあまりオススメではありません。

シリコン塗料

シリコン塗料はトータルで見て一番コストパフォーマンスに優れた塗料であるといえます。
耐候性が高く耐久性があるためウレタン塗料に比べ長い期間光沢を保持する事が出来ます。価格帯も中間層であるためコスト的にも申し分ありません。

しかし少々密着性に劣るきらいが在るため密着性を重視する部位には最適とは言えません。

フッ素塗料

フッ素塗料は一般に普及されている樹脂塗料の中では最上級に位置し耐候性もピカイチでお家を人一倍綺麗に保ちたいという方にオススメの塗料です。しかしその反面コストも高く、様々な短所も存在します。

塗膜が硬すぎるためヒビ割れが比較的起きやすいという事と、次回の塗り替えが大変になるという事です。
防汚性が高すぎるために特別な下塗り材を使用しないと塗り替えること出来なくなってしまうのです。
東京スカイツリーなどの建造物ではフッ素塗料の恩恵を十分に受け取る事が出来ますが、一
般の住宅ではフッ素を選択する必要はないかな、というのが私の思うところです。

無機塗料

無機塗料の説明の前にまず無機とは炭素を含まない物質のことを指し、石やガラスなどが挙げられます。無機物が紫外線に非常に強く劣化しにくいという特性を塗料に応用したのがこの無機塗料です。
しかし100%無機ではないため鉱石のような耐久性はありませんが、有機塗料より優れた耐久性を誇ります。親水性による防汚性能も高く難燃性といって燃えにくい性質も持っています。

しかし、最近では低価格のものも出てきましたが、コストも非常に高くなるため一般的に普及しているとは呼べない塗料です。
また石・ガラスと言ったワードから想像がつくように塗膜が硬いです。そのためヒビ割れが起きやすいという短所もあります。

機能性 ラジカルは塗料の名前ではない

ラジカル塗料や遮熱塗料を塗料の種類と間違えいる方が多いので、ここで一度解説をしていきます。

遮熱・断熱

遮熱と断熱は少し違うものですがここでは同じものとして扱います。
シリコン樹脂を使用した遮熱塗料にガイナというものがあり、耐久性が高く防汚性にも優れています。

価格はフッ素塗料と同等程度になってしまいますし、仕様が艶消しのみとなっていますが断熱・遮熱・防音と機能性に優れてるので、シリコン以上の仕様を望む方にはオススメかも知れません。

その他にもフッ素塗料に遮熱効果を付加した塗料も存在しています。

 

光触媒

光触媒塗料とは名前からイメージ出来るように日光で汚れを分解して雨で流れるというセルフクリーニング機能を持った塗料のことです。
汚れが付きにくいため耐久性が高く美しさを長く維持出来るとされていますが、全ての汚れに対応している訳ではないといったところや、知名度が低くため、使用される事の少ない塗料です。

 

ラジカル制御

塗膜が劣化するメカニズムを語るにはラジカルというワードは避けられません。

塗料に含まれている成分が紫外線に当たる事でラジカルが発生し、ラジカルが樹脂や顔料に悪影響を与える事で塗膜全体の劣化が起こります。
そのラジカルを抑制する機能を持った塗料の事をラジカル制御型塗料といいます。

この塗料に使用される樹脂にはアクリルもあればシリコンもあるので、ラジカル制御型というワードだけで判断するのではなくしっかりと使用樹脂についても考慮した方がいいでしょう。

プランと費用相場

どのようなプランが良いかはお客様の考え方それぞれです。

20年、30年大きな工事はしたくないという方は屋根をカバーするとか高耐久の塗料で工事を行うのが良いかと思いますし、気分転換に10年ぐらいで色を変えたいという方にはそこまでの高耐久は必要ないでしょう。施主様の年齢によっても人生設計や工事の計画が変わってくると思います。

想像される残りの塗装回数と、費用の二つの面でプランを練りましょう。

坪数(延坪) 塗装面積 費用相場
10坪 40㎡ 約20~40万円
20坪 80㎡ 約40~70万円
30坪 120㎡ 約60~100万円
40坪 160㎡ 約80~130万円
50坪 200㎡ 約100~160万円
60坪 238㎡ 約120~200万円
70坪 280㎡ 約140~230万円
100坪 400㎡ 約200~320万円

プランの練り方

プランの組み立てには予算や範囲などを一つ一つ決めていくと良いかも知れません。

予算はいくらを考えていますか?

塗るものは屋根、雨樋、雨戸などの金属部分も塗りますか?

遮熱・断熱、防音などの機能は必要ですか?

お求めの耐久性は10年ですか?20年ですか?

などなど決めなくてはならないことは多々ありますから、親身に相談に乗ってくれる業者とじっくりと検討していきましょう。

 

迷ったらこの塗料!

コストパフォーマンスで考えると、ラジカル制御型のシリコン樹脂塗料がオススメです。
グレードごとの価格の推移と、耐用年数の増加を見てみるとシリコン樹脂がコストパフォーマンスに優れているのは一目瞭然です。
メリット・デメリットも特に注意しなければならない事も無いので、迷ったときにはシリコン塗料での工事をおすすめします。

 

塗料の塗り方 工法三選

ローラー塗装

一般的な塗装方法です。ローラーブラシを用いて、手作業で塗料を塗り進めていきます。
基本的にどんな塗料でも使用できますが、より仕上がりが求められる玄関の塗装などには不向きです。

刷毛塗り

動物の毛や化学繊維を束ねた道具に、塗料を含ませ塗っていく工法です。
小面積の部分や、仕上がりが求められるテーブルなどに使用されます。

吹付塗装

塗料を霧状にして吹き付けていく工法です。吹付塗装は大きく分けて2種類あり、エアレス塗装とエアスプレー塗装に分けられます。
外壁塗装で大面積に用いられるのはエアレス塗装で、噴霧される塗料にエアーが混ざっていないため、ロスや飛散が比較的少なくなります。

石吹きやパターン吹き、より繊細な仕上げの塗装にはエアスプレー塗装が使われます。
塗料とともにエアーが噴射されるため飛散が多く、技術が必要とされます。

 

外壁の種類によっても使用材料は変わります

外壁材 起きやすい症状 特徴
モルタル ・ヒビ割れ フジモルなどの軽量モルタルを壁に左官し、パターンをつけた後に塗装をなされた外壁です。
サイディング壁のように基本的にコーキングの必要はありませんが、ヒビ割れが起きやすい材質ですので、入念な下地の点検と補修が必要とされます。
窯業系サイディングボード ・コーキング(シーリング)の劣化
・反り
・剥がれ
・膨れ
セメント系の材料で形成された外壁用ボードです。
様々な柄があり意匠性の富んでいますが、モルタル壁に比べ耐久性が劣ります。正しいタイミングでのメンテナンスを行うことで耐久性を伸ばすことが可能ですが、劣化時の症状が顕著に現れる外壁となっています。
金属系サイディングボード ・サビ
・へこみ
鉄などの金属素材で作られた板状の外壁用ボードです。金属であるためサビの発生などはありますが、軽量であったり耐火性に優れています。
ガルバリウム鋼板を用いた外壁材は特に優れた耐久性を誇ります。
樹脂系サイディングボード ・変色
・紫外線に弱い
塩化ビニル樹脂を原料に作られた外壁用ボードです。弾力や耐久性にすぐれた特徴をもっていますが、痛みが進んでしまうと加速度的に劣化してしまいます。
木質系サイディングボード ・劣化が早い
・腐食
木材で作られた外壁材です。木材なので定期的な塗装を怠ると著しく劣化してしまいますが、風情ある外壁を演出することが出来ます。
ALCボード ・ヒビ割れ
・膨れ
気泡を含んだコンクリートパネルの外壁です。気泡を含んでいるため断熱、遮音性に優れ、軽量な点が長所ですが、膨れの不具合が頻発する外壁です。
適切な下塗り材を使用したり、透湿性の高い塗料を使用することで不具合を防ぐことが出来ます。
コンクリート壁 ・ヒビ割れ
・エフロレッセンス
強度に優れ耐久性にも優れた外壁です。
熱を内部にため込む性質があるため、遮熱のクリアー塗装をするなどの工夫が効果的です。使用材料を間違えると激しく塗膜の剥離が起こることがあるので注意が必要です。
漆喰 ・汚れ
・ヒビ
基本的に塗料での塗り替えは適切ではありません。漆喰を塗りなおす方が耐久性、美観ともに優れています。
塗料での塗り替えを行う場合には丁寧な清掃と適切な塗料選択が重要です。

 

まとめ

外壁に合わせた材料を選択することが大切ですね。
工事の前にご自身でもプランを立てたうえで業者に相談すると、よりよい提案をしてもらえるかも知れません。

 

塗料には様々な性質がありました。
住宅の素材を理解して、適切な塗料、工法での施工が、納得のいく工事に繋がってくると思います。

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